年間2万人が訪れる酒蔵。モットーは「お客様本意」での酒造りー埼玉県小川町・松岡醸造

新潟出身の創業者の松岡祐エ門が酒造りに適した場所を探し、1851年(嘉永4年)埼玉県小川町へと蔵ごと移築し、創業した松岡醸造
小川町といえば、国から「重要無形文化財」の指定を受けている「細川紙」が有名な場所になります。

酒造りに適している埼玉県小川町

小川町は、秩父往還と八王子街道が交わる場所で、物資の集積地でした。
毎月多くの市が開かれ、商人が集まる繁華な場所でした。
特に、米穀の少ない秩父方面と米の生産が多い平野部を結ぶ中継地として、穀物商も多く活躍していました。そのため、お酒を楽しむ文化も根付いていました。

また、小川町は特に良質な水が取れることで有名です。
地下130メートルから汲み上げた仕込み水は、秩父山の石灰岩で濾過された天然水で、硬度149mg/ℓというトップクラスの硬水です。
この水は兵庫県灘の有名な「宮水」よりも硬度が高く、豊富なミネラル分が含まれています。
しかし、実際に飲んでみると、硬水ながらも柔らかく感じる不思議な水です。

この天然水は酵母の発育を促し、独特の旨味やキレ、丸みをもたらします。
また、低温発酵タンクを使用することで、低温帯でゆっくりと発酵させることができ、帝松特有のまろみと奥深さを持ったお酒が生まれるとのこと。

水、米、そして消費環境という三つの条件が揃った小川町は、酒造りに最適な環境でした。

松岡醸造の蔵見学

今回は松岡醸造7代目の松岡奨さんに蔵見学やお話しを聞かせて頂きました。

松岡醸造には年間約2万人の方が蔵見学に来られるのですが、基本的には社長の松岡奨さんが全て案内しているとのことです。
これは、社長自ら松岡醸造についてはもちろん、日本酒についてちゃんと説明したいという思いからとのことです。

またこちらの蔵見学の面白いところは、見学される方の日本酒の知識や知りたいことに合わせてお話や案内する内容を変えている点。
誰が行っても楽しめるのが松岡醸造の蔵見学なのです。

松岡酒造ではなく、松岡醸造という名前にしたのは松岡修造さんと間違えられるのからと冗談も笑
しかし、松岡修造さんと同じくらいの熱量で案内してくださいます。笑

日本酒造りと米について

奨さんは蔵見学の際にお米とお酒造りに関して面白い話をしてくださいました。

「日本全国には色々な日本酒があり、そのお酒ごとに色々なお米が使われています。
でも、日本酒造りにおいて米で味が変わるってことはないんですよね。

ではなぜ『〇〇というお米はこういう味がする』と言われるのかと思いますよね。
それはそれぞれのお米に特徴があるからなのです。
例えばお米によって、割れやすいや溶けにくい、またその逆もあります。
扱いづらいお米があったとして、その特性を知らずに造ってしまうと、発酵がうまくいかなく、結果的に甘くて酸味がある日本酒ができることがあります。

これによって、〇〇というお米を使うと、甘いお酒ができる!というような評価がされてしまうのです。

ですので、お米に味わいがあるわけでないのです。

日本酒造りにおいて、
日本酒の80%となる「水」で輪郭、タンパク質をアミノ酸に変える「麹」で旨味、「酵母」で香りが形成され、これらの調和を図って日本酒造りをするのが私達のお仕事なのです。

しかし、このお話を言語化するのは難しいので、ワインがブドウで語られることがあるように、日本酒もお米で語られてしまうことが多いのです。

だからこそ、ちゃんとした情報を伝えるのも私の役目だと思っています!!」

松岡醸造だけ⁉︎当時の貴重な検査室

ここが当時の名残を残した貴重な検査室になります。
他の酒蔵にも検査室はありますが、当時のまま残されている場所は少ないとのこと。
検査室がどのような部屋かというと、当時酒税は国家の税収として3分の1を占めておりました。
そのため、必ず酒蔵には税務署の方が常駐して、誤魔化していないかなどの確認をしていたとのこと。

椅子の足元の格子状になっているのは足を温める床暖、椅子の手前にあるのは手を温める高火鉢、お昼はうなぎという最高のおもてなしをされてたとのことです。

この本は当時のものになっており、大変貴重な本になります。
酒税が日本の税収の3分の1を占めていたこともあり、国民に飲酒を推奨する本になります。

目次の最初は「禁酒國は亡びる」。
その次には「國家は飲酒を奨励す」となっており、国民にお酒を消費してもらい戦費にしようというのが見て取れます。
読み進めていくと健康な状態で長く飲み続けさせるために「飲み過ぎは良くない」という内容も書かれております。不健康でお酒を飲まれなくなると国からすると困るので。

現在では酒税は国家税収の1.9%になってしまっており、生産量も消費量も落ちたことがわかるでしょう。

松岡醸造×ONKYO×SID

松岡醸造では、オンキヨー株式会社とコラボしているのです。
それがこちらのタンクに取り付けている世界一大きな骨伝導の加振機。
こちらの機械は、つけることによってタンクごとスピーカーに変えることができる。

これはお酒に曲を聴かせるのではなく、振動させることによってお酒の酵母の働きがどう変わるのかという実験をされているとのこと。

2023年はロックバンド:シドの「嘘」を聴かせて、振動を与えた日本酒
2022年には「おそ松さん」の映画の主題歌を聴かせて、振動を与えた日本酒を発売して話題を呼びました。

今年もコラボするのであれば楽しみでありますね!

常にチャレンジを続ける松岡醸造のこれから

ーー常に新しいチャレンジをしている松岡醸造さんですが、大事にされていることは?

私達のモットーはお客様本位です。
私達が美味しいと思っていても、お客様にとっては美味しいと思わないお酒もあるでしょうし、その逆もあると思います。
このモットーのもと、沢山の種類のお酒を造り、お客様にとって美味しいと思っていただけるお酒を造り続けたいです。

お客様本位がモットーなのですが、私も飲み手ですので、私(松岡社長)もお客様に入ると思っています。
自分本位のシリーズは、平仮名の「みかどまつ」シリーズとして分けました。
「みかどまつ」の味わいは「芳醇辛口」が中心になります。

お客様本位のものが「帝松」、自分本位のものが「みかどまつ」

他にも私達の銘柄で「虎の巻」という名前を付けた商品がありまして、これは昔の兵法からとっていて、いつか日本酒の見本になればという思いからつけさせて頂きました。

他にも色々なチャレンジをしているのですが、まだ公には発表できないものもあります。
公式インスタグラム公式Facebook酒蔵HPなどで随時報告できればと思いますので、ご確認ください。」

今回7代目の松岡奨さんに色々なお話を伺い、改めて常に新しいチャレンジをしつづけているのを感じました。
新しいことにチャレンジしている一方で、日本酒という伝統を守るための活動や地域への貢献や雇用創出など、社会的貢献に対する高い意識を感じ取れました。

今後も松岡醸造の新しい挑戦を追っていきたいと思います!

酒蔵情報

直売店でお酒を購入できますのでぜひ足を運んでみてください。

  • 酒蔵松岡醸造
  • 場所::〒355-0326 埼玉県比企郡小川町大字下古寺7-2
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  • TEL:0493-72-1234
  • 直売店営業時間:
    9時30分〜17時00分
    定休日:年中無休
    ※店舗は酒蔵に併設
  • HPからのオンライン購入も可能です
    URL:https://mikadomatsu.shop-pro.jp

Sake journal運営者

多くの人に大好きな日本酒の魅力を伝えたいと思い「Sake journal」を開設。

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