埼玉県深谷市・滝澤酒造|醪を試飲した時の感動を形に。レンガ造りの酒蔵でスパークリング日本酒を醸す。

酒蔵紹介
埼玉県深谷市・滝澤酒造|醪を試飲した時の感動を形に。レンガ造りの酒蔵でスパークリング日本酒を醸す。

埼玉県深谷市で代表銘柄である「菊泉」を中心に国内だけではなく、海外へとお酒を醸しているのが滝澤酒造
スパークリング日本酒の「菊泉 ひとすじ」シリーズは人気があり、滝澤酒造の看板商品の一つになります。

スパークリング日本酒「菊泉 ひとすじ」シリーズ

埼玉県深谷市は埼玉県の北部の荒川と利根川に位置し、県下で有数の農業地帯。
近代日本経済の父・渋沢栄一の生誕の地であり、東京駅に使われているレンガを造っていた日本煉瓦製造株式会社のレンガ工場が昔はあり、煉瓦造りの建物が未だに残っています。

この名残を受け、滝澤酒造の外壁や蔵内の一部は煉瓦造りとなっています。

煉瓦造りの煙突で、滝澤酒造の一つのシンボルになります。
煉瓦造りの麹室

今回は滝澤酒造の蔵元杜氏である滝澤英之さんに蔵の歴史から今までの挑戦、そしてこれからの挑戦についてお話を伺いました。

滝澤酒造の歴史

ーー滝澤酒造さんの歴史についてお伺いしてもよろしいでしょうか。

滝澤さん)滝澤酒造は1863年に埼玉県小川町で創業いたしました。
創業後は初代、2代目とお酒は評価されて賞を取るようになりました。
しかし、明治期に火事に遭ってしまい蔵が焼失してしまったのです。
そのため廃業していた酒蔵を買取、現在の地、埼玉県深谷市で酒造りを再開致しまして、現在に至ります。

酒蔵自体は現在(2024年)で160年程の建物になるので、来年頃を目処にリフォームを行い、酒蔵見学に来てくださるお客様をもてなせるような造りにしようと考えています。

過去から現在に至るまでの酒造りの歴史

ーー滝澤酒造さんは以前どのような酒造りを行なっていたのですか?

滝澤さん)戦中・戦後は米不足の時代がありました。
そこで曽祖父にあたる滝澤英三が水飴や醸造アルコールなどを添加した、三倍醸造酒(三増酒)を積極的に取り入れたと伺っています。
そのため、酒質としては甘いお酒がメインとなっていました。

現在ですと、三倍醸造酒は負の側面として言われることが多いのです。
しかし、当時の米不足などでお酒造りが中々難しい状況を考えると革新的だと私は感じています。

その後、高度経済成長から平成に入る頃には新潟県に代表される淡麗辛口のお酒が流行っていたのですが、滝澤酒造ではその頃も甘口のお酒がメインとなっていたそうです。

ーー滝澤さんが酒造り参加されるようになってから変わったことはありますか?

滝澤さん)私が酒蔵に入るまで甘口がメインだったのですが、蔵に入った時に酒質が甘いなと感じたので杜氏の方に「もう少し辛口でもいいのではないか」と相談し、徐々に辛口へと酒質を変えることになりました。

私は1998年から2007年までは杜氏の方に基礎を教わりながら酒造りを行っていたのですが、2007年の秋から杜氏として酒造りを行うようになりました。
杜氏になりたての時は、基礎は教わっていたものの中々思い通りのお酒が造れず、鑑評会などで賞を取ることもできませんでした。

杜氏になり、4年目頃から鑑評会金賞を取れるようになり、その後も4年連続金賞を取ることができるようになりました。
受賞できるようになった頃から、今までのお酒をもっと良くするだけではなく、新しい挑戦をしたいと感じました。

試行錯誤を繰り返したスパークリング日本酒

ーー新たな挑戦というところでなぜスパークリング日本酒を選んだのですか?

きっかけは、実家である滝澤酒造に入る前に東京都の石川酒造さんでお世話になっていたときです。
その時に醪(もろみ)や酒母の成分分析をさせていただいている中で、発酵途中の醪を試飲した時に感動したのです。
この醪の味をいつかお酒で再現したいと思いました。

蔵に戻り、基礎を学び、杜氏になり、安定したお酒造りができるようになってからスパークリング日本酒への挑戦を始めました。

2010年に「彩のあわ雪」という天然発酵のにごりスパークリングを最初に造りました。
こちらのお酒は当時私が感動した醪の味に近づけたのですが、3年間くらい泡が安定しなかったのです。

その時にお客様からクレームを頂くことがありました。
内容としては、開ける時に吹きこぼれてしまうというものや、購入後の車の中で吹きこぼれてしまい買い物袋の中や車内が汚れてしまったというのもありました。

お客様から頂いたクレームには沢山のヒントがあり、そこから澱の量や二次発酵の温度、成分などを見直し現在の安定した商品作りをできるようになりました。
また「菊泉 ひとすじ」を造る上でのヒントになりました。

ーー透き通ったスパークリング日本酒、「菊泉 ひとすじ」はどのような思いから造られたのですか?

澱を取り除く前の「菊泉 ひとすじ」の瓶内二次発行について説明してくださっている滝澤社長

滝澤さん)濁りスパークリングも良いと思っていたのですが、透き通ったスパークリング日本酒を造りたいと思ったのです。
なぜかというと、スパークリングワインの世界では濁っているものは田舎のお酒と呼ばれることがあったり、またハレの席で濁っているものでは素敵ではないと感じたからです。

そこで開発したのが「菊泉 ひとすじ」になります。
こちらは注いだ時にシャンパングラスの底から“ひとすじ”の泡が昇っていくというのと、お酒造り“ひとすじ”ということから名前を付けました。

「菊泉 ひとすじ」は特許を取得している独自製法で造っていて、この特許製法により、透き通ったスパークリング日本酒を造ることができました。

スパークリング日本酒を造る際は木の板に瓶を逆さにして固定します。
瓶の中に入っている澱を瓶先に集まるように最初は緩やかな角度から少しずつ鋭角に瓶を傾けていき、かつ、少しずつ瓶を回していきます。

その後、瓶先に集まった澱を特殊な機械で凍らして取り除き完成という形になります。

スパークリング日本酒の可能性について

ーースパークリング日本酒についての可能性についてどうお考えですか。

滝澤さん)スパークリング日本酒について十分可能性はあると感じています。
しかし、まだまだ国内外においてシャンパンやスパークリングワインの優位性は以前としてあります。

海外では有識者の方々からスパークリング日本酒について一定の評価を頂いているのですが、一般の方にはまだまだ受け入れられていない状況になります。

国内ではイベントなどに出展し、提供しているのですが、飲んだ際に美味しいとお声を頂くもののその後の購入や広がりについては弱いと感じています。
しかし、飲んだら美味しいと評価を頂けるので、認知やイメージがついていけば今まで以上に人気になると感じています。

現在はまだまだですが、スパークリング日本酒のポテンシャルは十分に感じているため、滝澤酒造でも今後スパークリング日本酒に一層力を入れていきたいと思っております。

また2016年に設立されたawa酒協会というスパークリング日本酒を醸す蔵元で構成された協会があり、協会内で知識の共有や広報活動を実施しています。
2024年現在は33蔵が入会しており、入会していない酒蔵さんの中には興味を示してくださっている酒蔵さんも増えているので、業界全体として、協会として盛り上げていきたいと感じています。

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